2020年4月の改正により高校授業料無償化制度の所得判定方法が変更になりました。今回は当社でも良くご相談いただくこの制度について解説いたします。高校受験を控えるお子様がいる世帯ではとても気になる制度かと思いますので、判定基準や支給額についてしっかりと確認しましょう。
高校無償化の対象者と支給額
対象者
この制度では、公立高校・私立高校どちらも支給の対象になります。また、全日制、定時制、通信制も問われませんので、幅広い進路でご利用できます。
世帯収入では、590万円未満では39万6,000円の支給が受けられ、590万円以上910万円未満では11万8,800円(基礎額)が支給されます。910万円以上の世帯は支援の対象になりません。
これは受給資格を満たすモデルケースとして、両親+高校生・中学生の4人家族で、両親の1人が働いている4人家族を想定して算出されたものです。実際には所得要件を算出する計算式が使われ、課税標準額や調整控除が判定基準としてみられるため個々で計算する必要があります。
支給額
令和2年7月からは、支給額を決める所得判定は下記の式で計算されます。
市町村民税の課税標準額 ③ × 6 %-市町村民税の調整控除の額 (× 3/4:政令指定都市の場合)
税額決定通知書で確認する場合は、課税標準欄にある③の額をご確認ください。
市町村民税の調整控除額は所得税と住民税の差額を基に計算されていますが、③が200万円を超えている方は2,500円が調整控除額と考えて大丈夫です。
令和2年7月からは支援額が引き上げとなり、先に述べたとおり所得の判定方法も変更となりました。年収約590万円未満世帯で私立高校等に進学する方(在校生含む)の支援上限額が上がるなど、高等学校等就学支援金の額が手厚くなりました。
上記による算出額が、15万4,500円未満(年収目安590万円未満に相当)であれば支給額は最大39万6,000円、
算出額が30万4,200円(年収目安910万円未満に相当)支給額は11万8,800円です。
※夫婦共働きの場合は2人分の合計で判定することになります。
令和2年7月からの変更点について
令和2年7月からは支援額が引き上げとなり、先に述べたとおり所得の判定方法も変更となりました。年収約590万円未満世帯で私立高校等に進学する方(在校生含む)の支援上限額が上がるなど、高等学校等就学支援金の額が手厚くなりました。
※1 私立高校(全日制)の場合上限39万6000円、通信制の場合29万7000円が支給上限額。また、高等専門学校(高専)1~3年生は23万4600円が支給上限額。
※2 両親、高校生・中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合の目安。
(参考サイト)文部科学省:私立高校授業料実質無償化がスタート
https://www.mext.go.jp/content/20200117-mxt_shuugaku01-1418201_1.pdf
注意点
支給の対象になるために年収額を調整しようとされている方は以下の点に注意が必要です。
ふるさと納税をしている場合
2020年6月までは、住民税の所得割が収入の判定基準に使われていたため、ふるさと納税を利用して判定金額を調整できました。
しかし改正後は、市町村民税の課税標準額が判定基準に使われていたため、ふるさと納税をしていても対象外になる可能性があります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)をしている場合
判定金額を下げる効果があるものとして、社会保険料控除の対象になるiDeCo(個人型確定拠出年金)があります。iDeCoを利用することで判定金額を調整できますが、iDeCoで積立をしてしまうと老後までそのお金は引出せません。判定基準の額とどれぐらいの差があるのか、必要な額は老後まで使わなくてよい額なのかを見極めて検討する必要があります。
高校無償化の所得判定の時期はいつ?
高校無償化の所得判定の時期は、高校入学時の4月に1回、高校1年生~3年生の7月に1回ずつの合計4回です。
定基準の時期と該当する所得の時期は下記の通りです。
<2021年4月入学の場合>
このように、支援金を受けるには必ず毎年度手続きが必要です。 入学時は1年間を4月~6月分、7月~翌3月分の2区分に分けて支給の審査を行うため、2回申請しなくてはなりません。 申請については、学校が定める日までに申請書類を学校に提出しなかった場合、支援金を受給できない場合がありますので、提出書類の締め切りは事前に学校に確認しておきましょう。
まとめ
2020年4月に高校無償化制度が改正され、私立高校の平均的な授業料程度(39万6,000円)まで支給金額が上がりました。また、所得判定は課税標準額を基準に算出されることに変わったため、以前から無償化制度を使っている保護者の方も、申請する際には改めて計算する必要があります。
支給額が増えたとはいえ、私立高校の学費は学校によって異なるため、学校によっては学費をすべて賄えるとは限りません。
また、私立高校では、申請から給付決定までに時間がかかるので、その間は授業料をいったん納入しなければならないことがほとんどです。公立高校でも入学後の申請となるため、入学時にかかる資金にはあてられないことにも注意が必要です。
お子様の教育資金は事前にかかることが想定できるお金です。給付金に頼らず、事前に準備をすることが大切です。できればお子様が中学2年生になるまでには家計の所得を確認し、無償化の対象になるかを確認しましょう。もし、対象から外れる場合には貯蓄等で準備をしましょう。