雇用保険は令和2年に一部改正がありましたが、令和3年の2月にも変更(訂正)された部分があり、雇用の制度にもいくつか変更がありました。
コロナウイルスの影響で失業・転職する可能性のある方や出産を控えている方・育児や介護で仕事を休む予定の方もいらっしゃるかと思いますので再度確認をしておきましょう。 今回は訂正になった雇用保険の内容と雇用の制度を令和2年の雇用保険の改正も含めてご説明します。
雇用保険とは
雇用保険は働く人の生活の安定や再就職の促進を図るための労働保険の一つです。
失業したときに次の仕事に就くまでの一定期間に給付を受けられたり、育児や介護で仕事を休む時に給付を受けられたり、就職に必要な知識や技術を習得するための職業訓練の費用の一部の給付を受けられたりします。
※職業訓練については下記の記事でご確認ください。
<関連記事>【R3年4月に講座追加】資格取得に使える雇用保険の制度
※高年齢雇用継続給付についての詳細は長くなってしまうためまたの機会にご説明します。
雇用保険の加入の条件は?
正社員だけでなく、一定の条件に該当していれば契約社員やパート・アルバイトの方も対象となりますが学生等の場合は対象外となります。 ※2か所以上の会社で働く場合は“主たる賃金を受ける会社”で加入します。
・労働時間が週20時間以上
※パート・アルバイトで毎週のシフトに変動がある場合は“月の合計が週20時間相当超えるかどうか”で判断され、一時的に残業等で20時間を超えた場合は対象外となります。
・31日以上の雇用見込みがある
・学生以外の人
※卒業見込みで卒業後に同じ会社で働く予定の人・夜間や通信制・定時制に通う人は除きます。
雇用保険の保険料は保険料率を基に計算される
雇用保険の保険料は働いている本人と事業主が負担しますが、事業主が払う保険料率の方が高く設定されております。保険料率が変わるのは毎年4月1日となっておりますが、昨年(令和2年)からの変更はなく、令和3年4月1日からの一般の事業の場合は労働者と事業主を合わせて給与の0.9%を払うことになっております。
・働いている本人負担分
給与(通勤手当や残業手当などの諸手当を含む)×0.3%
・事業主負担分
給与(通勤手当や残業手当などの諸手当を含む)×0.6%
雇用保険の給付がもらえる条件と金額は?
雇用保険の各種の給付金を受け取るには雇用保険に一定期間加入していることが要件になっており、それぞれの給付金は1日当たりの給与を基に計算して給付されますが、1日当たりの給与の額や支給される額には上限と下限があります。
雇用保険の基本手当日額・支給限度額等の変更は、通常は毎年8月1日に行われますが、毎月勤労統計において集計ミスが確認され、再集計により平均定期給与額が訂正されたことを踏まえて令和3年2月1日以降の認定日からは一部が変更(訂正)されています。
<令和3年2月1日以降のそれぞれの給付金の変更点>
・失業給付:29歳以下の賃金日額・基本手当の日額の上限の変更
・育児休業給付・介護休業給付・高年齢雇用継続給付:支給限度額の変更
失業給付金に関する変更点
失業給付金(失業保険)について
失業給付金(失業保険)とは、雇用保険に加入している人が、転職やリストラ、倒産などで仕事を失った場合(失業)の一定期間に受け取ることができる給付金です。
<給付額>
失業給付の基本手当日額は、離職した方が毎月もらっていた給与を基に算定されます。
退職前6カ月間に支払われた1日当たりの給料の50~80%(基本手当日額)が一ヶ月ごとに支払われる仕組みになっています。
令和3年2月1日以降分の訂正された金額は下記の図の通りとなります。
(厚生労働省リーフレットから抜粋:令和3年2月1日からの基本手当日額等の適用について)厚生労働省リーフレット:令和3年2月1日からの基本手当日額等の適用について
<被保険者期間の計算方法>
被保険者期間の計算方法は下記の通り令和2年8月1日から一部追加になっております。
・賃⾦⽀払の基礎となる日数が11日以上ある月を1ヶ月と計算
・賃⾦⽀払の基礎となった労働時間数が80時間以上ある月を1か月と計算(令和2年8月1日追加)
失業給付金に関する注意点
<給付金を受け取れないケース>
正社員もちろん、パート・アルバイト等でも雇用保険への加入要件を満たしている場合は給付金を受け取れますが、下記に該当する方は受給できませんので注意しましょう。
・大学院等に通学している
・既に次の就職先が決まっている
・自営業を始めた(始める予定)
・会社等の役員に就いた
・就職活動をしていない
<退職理由によって受給開始の期間が変わる>
失業手当は退職してすぐに受給開始になるわけではありません。
退職理由によって支給されるまでの待機期間が違い年齢によっても支給される期間に違いがあります。
・倒産や解雇などの会社都合:待機期間1週間
・超開会後:1週間の待機期間後に給付されない給付制限期間が3か月ある
・自己都合:1週間の待機期間後に給付されない給付制限期間が2か月ある
※令和2年10月1日以降の5年間のうち2回までは給付制限期間が3ヶ月から2ヶ月に短縮されるようになりました。
厚生労働省HPリーフレット:「給付制限期間」が2か月に短縮されます(令和2年10月1日から適用)
育児休業給付について
育児休業給付とは
育児休業給付とは雇用保険に加入している人が育児休業期間中(お子様が1歳の誕生日を迎える前日まで)に1カ月あたりの給与が休業開始前の8割以上支払われていない場合に母親でも父親でも受け取ることのできる給付金です。
※休業後に職場復帰することが条件となっております。
※育児休業給付金を受給している期間は、健康保険や厚生年金保険の保険料が免除されます。
※夫婦ともに育休を取得する場合の休むことができる期間は1歳2か月まで延長されますが給付期間の上限は1年となっております。(H22.7.1~)
※保育所等に入ることができない等のやむを得ない事情がある場合はお子様が1歳6か月~2歳の誕生日を迎える前日まで支給期間を延長することが可能となっております。(H29.10.1~)
<給付額>
給与日額の67%(6ヶ月以降は50%)を受け取ることができます。
<支給期間>
育児休業給付金の支給期間は育児休業期間のとなっておりますが、母親と父親の場合で期間が違いますので注意しましょう。
母親の場合:出産日の翌日から8週間は産後休業期間となりますので8週間が終了した次の日からお子様が1歳の誕生日を迎える前日までとなります。
父親の場合:出産予定日からお子様が1歳の誕生日を迎える前日までとなります。
<支給限度額>
令和2年8月1日の改正により支給限度額が下記の通りになりましたが、令和3年2月1日以降時点での訂正はありません。
・支給率 67%: 305,721円(変更なし)
・支給率 50%:228,150円(変更なし)
介護休業給付について
介護休業給付とは
介護休業給付は、雇用保険に加入していて同じ会社に1年以上働いている人を対象に、2週間以上常時介護が必要な家族の介護をする為に休業した場合に支給される給付金です。
※介護をする対象に該当する人は配偶者(事実婚含む)・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫となります。
※会社から介護休業中に給与が支払われている場合は介護休業給付が減額・対象外とされます。
※2週間以上常時介護が必要と判断されるためには公的介護保険の要介護度2以上か厚生労働省HPにある判断基準の表を基に柔軟に判断することになっております。
厚生労働省HP:介護休業給付金Q&A
<支給期間>
給与の67%を最長で3ヶ月間受けることができます。
※介護が必要な人ごとに3ヶ月(通算93日まで)が支給され、3か月継続して休む以外でも最高3回まで分割して休みを取り給付を受けることができます。
※休業中ではなく、休業が終わってからの支給になりますので注意しましょう。
※介護が必要な家族が複数人いる場合は期間が重複していない場合はそれぞれがもらえますが、重複している場合は倍になるわけではありません。
※介護が必要な家族1人に対して複数の親族で介護をするために休業する場合は一人ひとりが給付金を受け取ることができます。
<支給限度額>
令和2年8月1日の改正により支給限度額が下記の通りになりましたが、令和3年2月1日以降時点での訂正はありません。
上限額:336,474円(変更なし)
子の看護休暇制度・介護休暇制度の変更(令和3年1月1日~)
H29年の改正で子の看護休暇制度・介護休暇制度は半日単位で休暇をとれるようになりましたが、さらに令和元年12月27日に改正され、お子様の看護休暇やご家族の介護休暇が時間単位で取得できるようになりました。施行開始は令和3年1月1日となっております。
子の看護休暇制度・介護休暇制度とは?
日雇い以外のすべての働く人には下記に該当する場合に事業主に申し出ることにより年に5日まで1日単位又は半日単位休暇を取得することができます。(平成29年1月1日~)
※対象者が2人以上の場合は年に10日までとなります
※事業主は給与の支払義務はありませんので休んだ分の給与がどうなるかは勤務先の判断となります。
・小学校就学前までお子様を養育する方
・要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う方
<対象外となる方>
・働いている期間が6か月未満の場合
・週の所定労働日数が2日以下の場合
※半日単位休暇を取得することが難しい業務に従事する方や1日の所定労働時間が4時間以下の場合の場合は1日単位のみの休暇となります。
<改正前:~令和2年12月31日>
・半⽇単位で休暇をとれる
・1⽇の所定労働時間が4時間以下の場合は1日単位
<改正後:令和3年1月1日~>
・時間単位で休暇がとれる
・1⽇の所定労働時間が4時間以下の方も時間単位で休暇が取れる
※半日単位や時間単位で休暇を取るのは難しい業務に従事する方は1日ごとになりますが、時間単位で休暇が取れない場合でも半日単位休暇をとれる場合は柔軟に事業主が対処するようになりました。
※働いている期間が6か月未満の場合や週の所定労働日数が2日以下の場合は引き続き対象外となっております。
高年齢雇用継続給付について
高年齢雇用継続給付とは
60歳以降も働く意欲があり60歳から65歳までの給与が60歳前と比べて75%未満になってしまった時に低下率に応じて月の給与の最大15%を受け取ることができる給付金です。
※高年齢雇用継続給付についてのご説明は長くなってしまうため、また近いうちに改めてご説明いたします。
<支給限度額>
令和2年8月1日の改正により支給限度額が下記の通りになりましたが、令和3年2月1日以降分の訂正により支給限度額通り変更となりました。
支給限度額:365,114円(令和2年8月1日からの額)
支給限度額:365,055円(訂正後:令和3年2月1日からの額)
<70歳までの就業確保(令和3年4月1日からの変更)>
65歳以降も働きたい場合は70歳まで働けるように企業に努力義務が課されました。
令和3年4月1日以降は現在の65歳までの雇用確保は義務のまま、さらに下記のどれかを行う努力義務が新しく加わりました。
・70歳までの定年引き上げ
・定年制の廃止
・70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
・70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
・70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
急な失業、介護や育児には日頃からの備えが大切!
雇用保険に加入していても給付金がもらえるまでに時間がかかり生活費が足りなくなってしまう可能性がありあます。
日頃から生活費の3~6ヶ月分程度は万が一の費用としてすぐ引き出せるような貯蓄方法で準備しておきましょう。
基本的に65歳まで年金はありませんし、60歳以降に働く場合でも給与が下がる可能性の方が高くなります。60歳以降に住宅ローンが残っている場合やお子様の教育費がかかる場合は特に貯蓄を取り崩しての生活になる可能性の方が高くなります。老後の費用が足りなくならない様に早いタイミングから計画的に準備をしましょう。
いざという時の備えや老後の費用についてご不安をお持ちの方お気軽にご相談ください。