2012年に高年齢者雇用安定法が改正されたことにより、60歳以降も働きたい場合は65歳まで働けるようになりました。60歳から退職せずに働く場合は給与も下がりにくいですが、60歳で一度退職して同じ会社で再度働く場合や他の会社に再就職する場合は退職前より給与が60%~70%くらいになってしまうことも多くあります。
※H28年12月末までは、“高年齢継続被保険者”となっている場合を除き雇用保険の適用除外でしたがH29年1月1日以降は雇用保険の改正で65歳以上の方も対象となっております。
本日は先日の雇用保険の制度の記事で名称が出ていた高年齢雇用継続給付についてのご説明です。
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高年齢雇用継続給付は60歳以降も働く意欲があり60歳から65歳までの給与が60歳前より75%未満になってしまった時に低下率に応じて給与月額の最大15%を受け取れる給付金です。
高年齢雇用継続給付は失業給付を受け取らずに引き続き働く方を対象とした“高年齢雇用継続基本給付金”と失業保険の一部を受け取ってから再就職した方を対象とした“高年齢再就職給付金”の2種類の給付金があります。
なお、高年齢雇用継続給付金は2025(R7)年度に60歳になる人から現在の給付水準の半額、2030(R12)年度以降に60歳になる人から廃止予定となってなります。
※年金の受け取り開始は原則65歳に変更され、現在60歳から65歳に移行している途中です。2025(R7)年は男性の年金受け取りが65歳から、2030(R12)年は女性の年金受け取りが65歳からになり特別支給の厚生年金(報酬比例部分)がなくなるタイミングとなります。
高年齢雇用継続基本給付金の対象者は?
・雇用保険を5年以上払っていた期間がある人
・60歳以上65歳未満の雇用保険に加入している本人
・失業給付を受け取っていない人
・同じ会社で引き続き働いていて給与が75%未満になった人
高年齢再就職給付金の対象者は?
・雇用保険を5年以上払っていた期間がある人
・60歳以上で失業保険の一部を受け取っている時に再就職した人
※給付日数が100日以上残っている必要があります
・再就職先に1年以上働くことが確実な人
・再就職先の給与が元の就職先の75%未満になった人
支給額
・賃金低下率が61%より多く75%未満の場合
60歳以降の毎月の給与×一定の割合(15%〜0%)
・賃金低下率が61%以下の場合
60歳以降の毎月の給与×15%
給付金を受け取れる期間
給付金を受け取れる期間は高年齢雇用継続給付と高年齢再就職給付金で期間が違います。
・高年齢雇用継続基本給付金の場合
60歳~65歳
・高年齢再就職給付金の場合
失業保険の支給が残っている日数よって受け取れる期間が変わります。
※100日以上200日未満の場合:最長1年間
※200日以上の場合:最長2年間
※日数が残っていても65歳を超えるともらえなくなります。
注意点
・支給対象月に支払いを受けた賃金の額がR3年2月1日に修正された支給限度額(365,055円)以上であるときには高年齢雇用継続給付は支給されません。
・支給対象月に支払いを受けた給与と高年齢雇用継続給付として算定された額の合計が支給限度額を超えるときは、365,055円から給与分を引かれた額が支給額となります。
・60歳未満で早期退職をして再就職等をした場合でも60歳時点の給与との比較で75%未満になっているかどうかで支給を判断されるため対象外になってしまう可能性があります。
・60歳以降にボーナスが出る場合、金額によってボーナス月は支給が受けられない可能性があります。
・高年齢雇用継続給付金を受給することで厚生年金の一部が停止になることがあります。
※働きながら特別支給の老齢厚生年金(60歳~65歳未満で受け取れる厚生年金がある場合)や65歳からの老齢厚生年金をもらっていると給与によっては年金額の一部が支給停止になりますが、高年齢雇用継続給付を受けている場合でも年金の一部(給与月額0.18%~6%分)が支給停止になります。
在職老齢年金の見直し(2022(R4)年4月~)
先ほどもお伝えした通り、働きながら特別支給の老齢厚生年金(60歳~65歳未満で受け取れる厚生年金がある場合)や65歳からの老齢厚生年金をもらっていると給与と年金の額によっては年金額の一部が支給停止になりますが、来年2022(R4)年4月から見直しとなり、
支給が停止になる基準となる額が変更となります。
来年4月から変更になるのは60歳~64歳の方の場合に下記の通りとなります。
変更前(~R4年3月末)
給与と年金の合計月額が28万以上の場合に厚生年金の一部もしくは全部が停止される。
変更後:(R4年4月~)
給与と年金の合計月額が47万円以上の場合に厚生年金の一部もしくは全部が停止される。
※65歳以上の方であれば給与と年金の合計月額が47万円を超える場合に厚生年金の一部または全額の支給が停止されることになっておりますが来年の変更はありません。
28万以上から47万以上に変更になることで、今まで厚生年金の一部もしくは全部が停止されていた方(される予定の方)も年金が受け取りやすくなります。
在職老齢年金の支給停止について詳しく知りたい方はこちら(日本年金機構リーフレット)
改正の影響のある方
働きながら特別支給の老齢厚生年金(60歳~65歳未満で受け取れる厚生年金がある方)
※男性:1961年4月2日以後生まれ・女性:1966年4月2日以後生まれの方は原則65歳からの年金受取となる為対象外となります。
老後の資金は計画的に準備しよう
定年が延びて70歳まで働く機会があったとしても現役の時と同じように働くのは体力的にも難しい場合があります。健康面に気を付けることはもちろんですが、老後の資金がいくら必要なのかは人によって違いがあります。どんな老後を過ごしたいのか?希望の老後にはいくら必要なのか?などを早めに確認して時間をうまく使って計画的に貯めましょう。