皆さんは「相続」についてどのぐらい理解していますか。身近な方が亡くならないと、あまりピンと来ないかも知れませんが「相続」はいずれ必ず訪れる大事な手続きです。
財産の有無や相続税の大小に関わらず、遺産相続をめぐるトラブルは誰にでも起こる可能性があり、近年そうしたトラブルは増加傾向にあります。親族間でのトラブルを避けて円満に相続手続きを終えるためにも正しい知識が大切となります。本日はいつか来るその日のために、今のうちから知っておいた方がいいポイントを解説します。
相続のトラブルは誰にでも起こりうる!
「相続対策は早めに」という話はよく耳にされると思います。そんなとき「うちは財産が少ないから大丈夫」「仲がいいから大丈夫」「まだ時間があるから大丈夫」というように考えていないでしょうか?
令和元年度司法統計年報によると、遺産分割事件7,224件のうち、遺産総額が1,000万円以下だった事件数は2,448件・5000万以下の事件数が3097件となり、遺産分割事件の約77%は遺産の価格が5000万円以下の場合に発生していることになります。
相続によるトラブルは、一度揉めてしまうと中々収集がつかないケースも少なくありません。揉めてから後悔しないよう、財産が少ないからと言って「油断」せず、親子ともに元気なうちにしっかりと対策しましょう。簡単に始められる対策として、まずは自分の財産を把握して一覧表を作るところから始めるのがおすすめです。
相続人になれる人
相続人という言葉は皆さん聞いたことがあると思います。この記事でもたくさん出てきますが、それぞれ意味が異なりますので、この機会に確認しておきましょう。
- 被相続人:財産を遺して亡くなられた人のこと
- 相続人:遺産を相続する人のこと
- 法定相続人:民法によって定められた「遺産を相続する権利のある人」のこと
法定相続人となれる人の範囲と優先順位については、民法によって定められています。被相続人が亡くなられた際に、遺言書が作成されていない場合は法定相続人全員が話し合って遺産をどのように分けるかを決めることになりますが、民法で決められた割合で分けることが多くなります。
遺言書がある場合は、遺言書の内容に従って遺産相続を行いますが、遺言書の内容にもらっても困る財産がある場合もある為、話し合いの内容が優先されます。
また、遺言書を作成する場合は、法定相続人以外の人に対しても遺産を渡すことも可能となります。
民法で規定されている法定相続人の範囲と順位は下記の通りです。
法定相続人の範囲
配偶者は常に法定相続人となり、配偶者以外の人下記の順位に基づいて配偶者と一緒に相続人となります。第2順位の人は第1順位の該当者がいないときに、第3順位の人は第1順位・第2順位の該当者がいない場合に相続人となります。
- 第1順位:子(もしくは孫など)
子がすでに亡くなっている場合は、被相続人から見て孫が相続人となります。
※子も孫も亡くなっている場合はひ孫と後の世代の子に該当する方へ相続権が移ります。 - 第2順位:父母(もしくは祖父母など)
父母も祖父母もいる場合は被相続人により近い世代である父母の方が優先されます。
※あまりないかもしれませんが、父母も祖父母孫も亡くなっている場合は曾祖父母と前の世代の該当する方へ相続権が移ります。 - 第3順位:兄弟姉妹
被相続人の子や父母等に該当しない場合に兄弟姉妹に相続人となります。
※兄弟姉妹もすでに亡くなっている場合は、兄弟姉妹の子が相続人となります。
民法で決められている相続の割合
民法で定められている、相続人ごとの相続割合は以下の通りです。
配偶者の相続割合 | 相続人の割合 | |
配偶者と第1順位 | 配偶者 1/2 | 子(孫)1/2 |
配偶者と第2順位 | 配偶者 2/3 | 父母(祖父母)1/3 |
配偶者と第3順位 | 配偶者 3/4 | 兄弟姉妹 1/4 |
※相続人が複数いる場合には、その人数で均等に分けます。
※配偶者が既に亡くなっている場合は該当する順位の人で均等に分けます。
主な相続財産について
相続財産とは、亡くなった方から相続人へと引き継がれる財産ですが、預貯金や現金、不動産、株券など資産価値がある財産だけでなく、借金や滞納家賃、滞納税などの負債・権利義務も相続されるので注意が必要です。
資産価値のあるプラスの相続財産に該当するものは下記の通りです。
- 不動産:土地(田・畑・山林含む)・家屋(構築物含む)
- 現金・預貯金
- 有価証券(株・債券・出資金等)
- 車・船舶・骨董品・絵画等
- 家財道具
- 保険
相続財産の総額が一定の基準以上の場合相続税を納める必要があります。
プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合は相続の放棄の手続きも出来ますが、相続の放棄をする場合は必要書類を揃えて家庭裁判所に申請する必要があり、相続を知った時から3ヶ月の期限がある為マイナスの財産についても早目の把握が大切です。
期限延長の申立という手続きもありますが、財産の一部を使ってしまった場合は放棄の手続きはできなくなりますので注意が必要です。
相続税の基礎控除
相続税はすべての場合に課税されるわけではありません。相続財産が一定の金額以下なら非課税となる範囲を「基礎控除」といいます。
基礎控除の計算方法
相続税の基礎控除は下記の計算式によって算出されます。
3000万+600万×相続人の数
相続財産が基礎控除の金額以下であれば、相続税はかからず、相続税の申告も不要となります。
ただし、相続税はかかる場合で特例等の制度を利用して納付する相続税が0の場合は申告が必要になりますので注意が必要です。
相続発生後のスケジュール
被相続人の死亡
7日以内:死亡届の提出/火葬・埋葬許可証の提出
3ヶ月以内:相続放棄・限定承認の手続き
4ヶ月以内:被相続人の準確定申告(所得税の申告)
10ヶ月以内:相続税の申告・納税
相続手続きに必要になる書類
被相続人(亡くなられた方)
- 出生から死亡までの戸籍(改正原戸籍・戸籍附表含む)
- 除籍謄本
相続人(相続する権利のある方)
- 戸籍(改正原戸籍・戸籍附表含む)
- 住民票
- 印鑑証明書
相続の対策は時間が大切
相続はいつ発生するかわかりません。また、いざ対策をしようと思っても、病気や認知症になってしまうと思うように進められない、すでに対策できない状況になっている場合もあります。少し早いのでは?というくらい元気なうちにしっかり対策をしておきましょう。また、子が両親の相続を心配して対策を勧める場合は無理に進めるとこじれる場合もあります。両親が乗り気ではない場合はしっかり話し合いお互いが歩み寄って落としどころを決めましょう。親子だけで話し合いをすると、想いは同じでもうまく伝わらない場合もあります。何から始めたら良いかわからない、少しずつ進めていきたいという方はお気軽にご相談下さい。