7月も下旬に入りましたね。暑い日が続いておりますので体調に気を付けてお過ごしください。
障がいをお持ちの方は所得税の控除があったり、相続が発生して財産を相続する方が障がいをお持ちの場合は相続税の控除があったりしますが、その他にも障がいをお持ちの親族等の生活を支えるための贈与にも一定の額まで非課税になる制度がある為、今回はその“特定贈与信託”の制度のご説明です。
特定贈与信託ってなに?
信託とは信頼できる第三者に財産などを託して管理・運用してもらえる制度の事です。
特定贈与信託は、信託契約の一つとなりますが、障がいをお持ちの方の生活の安定を図ることを目的に、親族の方などが信託銀行等に金銭等の財産を預け、信託銀行等がその財産を管理し、その財産を特定障害者の方の生活費や医療費などの為に定期的に金銭が払われる制度です。
障がいをお持ちの方のご両親等(贈与した方)がお亡くなりになった場合でも信託銀行等が引続き財産を管理・運用し、生活のための資金の交付をしてくれますので障害を持った親族が生活が困らない様に対策が出来る様になります。 また、この特定贈与信託を利用することで障害の程度に応じて6,000万円または3,000万円まで贈与税がかからずに財産の贈与をすることができます。
イメージ図
非課税の対象者
<6000万非課税の対象者>
- 重度の知的障害者
- 精神障害者保健福祉手帳1級の方
- 身体障害者手帳1級または2級の方
- 戦傷病者手帳の特別項症から第3項症までの方
- 原子爆弾被爆者で厚生労働大臣の認定を受けている方
- 常に就床を要し、複雑な介護を要する者のうち、その障害の程度が①または③に準ずる者として市町村長等の認定を受けている方
- 65歳以上の方で①または③に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている方
<3000万非課税の対象者>
- 中軽度知的障害者
- 精神障害者保健福祉手帳所有者で1級以外の方 ・65歳以上の方で①に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている方
- 65歳以上の方で①に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている方
委託できる対象者は?
信託をすることが出来る対象者は贈与を受ける特定障害者の方のご親族や社会奉仕や公共の福祉などを熱心に実行支援している方等が利用することができます。
※親族等が何人かで共同して信託することもでき、1人の特定障害者を複数の親族で支えることも可能。
信託できる財産は?
特定贈与信託は定期的に金銭を交付する必要がある為、信託できる財産は、法令により下記のように決められております。
1.金銭、2.有価証券、3.不動産など、収益を生じる財産や換金性の高い財産に限られる。
必要な経費
信託銀行等に払う報酬や振込手数料などが必要となり、これらの費用は信託銀行等に預けた財産から支払うことになります。
※費用は信託銀行や信託会社によって異なる。
必要書類は?
- 贈与をする親族:印鑑
- 贈与を受ける特定障害者:「障害者非課税信託申告書」・「特定障害者の区分に応じた証明書」・「住民票」・「印鑑」等
メリット
- 直接贈与すると通常110万以上(暦年贈与の場合)は税金がかかりますが特定贈与信託を利用すると贈与税がかかりません。
※相続税がかかる方が贈与をする場合は節税効果もあります。 - 通常相続が発生した場合に相続開始前7年以内(R9年までの死亡の場合は3年以内)の贈与は相続財産への持ち戻しになりますが、この制度を利用した贈与は持ち戻しの対象となりません。
デメリット
- 信託するために費用がかかります。
- 給付を受けた金銭は生活費や療養費のために使用する必要があります。 ・贈与を受ける特定障害者の方の死亡の日に終了することとなっておりますので途中で信託期間を変更することができません。
※贈与を受ける特定障害者の死亡時に財産が余っていた場合は障がい者の相続人または受遺者に交付(相続)されますが、信託委託者(親等)が信託契約時に信託終了後にはボランティアへ寄附することなどを指定することも可能です)。 - 金融機関等が破綻した場合などの預金保険や投資者保護基金の対象外です。
- 特別の事情がある場合を除いてまとまったお金の一時引き出しはできません。
まずは相続税がかかるかどうかの確認から
特定贈与信託は大きな金額を一度に贈与することで節税が出来たり、贈与する方が万が一死亡した後でも障がいをお持ちの親族が困らない様に出来るメリットもありますが、費用がかかったり、途中で解約が出来なかったりとデメリットもあります。まずは相続税がかかるのかどうか?や贈与をする方の老後の生活費を十分残しているかどうか?もしっかり確認してから制度を利用しましょう。 今回は特定贈与信託のご説明でしたが、障がいがあってもなくても利用できる制度で万が一の場合に親族に定期的にお金を渡せる信託もありますのでまたの機会にご説明したいと思います。